「SEOは今後どうなるのか?」
「AI検索対策にいつ、どの程度投資すべきか?」
生成AIの普及に伴い、多くのマーケティング責任者が今後のチャネル戦略について検討を進めています。
市場には「検索行動がすべて対話型AIに置き換わる」といった予測もあり、不確定な未来に対する懸念の声も聞かれます。
2025年12月2日、Speeeは、これらの問いに対してデータに基づいた見解を示すため、オフラインイベントを開催しました。 イベントの冒頭、本イベントのゴールとして以下の2点が共有されました。これらは、不確実なAI時代においてマーケターが最も必要としている指針でもあります。
- AI検索の“現在地”を正しく把握する
ユーザー行動・検索市場の変化を整理し、AI検索対応に「いつ・どの程度」投資すべきかの時間軸を掴む。 - 事業グロースにつながるAI検索対策の方針を理解する
自社が「いま」取るべきアクションを明確にし、持続的な事業グロースに繋がるマーケティング戦略を描けるようにする。
本記事では、このゴールを達成するために語られたセッション内容の一部をレポートします。
結論から言えば、現時点では 「既存チャネルへの投資は維持しつつ、AI対策への準備を始める」 ことが合理的です。本記事では、その理由と背景について掘り下げます。
「SEOはオワコン」説の検証
登壇したのは、弊社マーケティングインテリジェンス事業本部セールス&マーケティング部長兼AEOサービス本部 サービス推進責任者の藤井 慧里。
冒頭、藤井が提示したのは、AI検索市場の現状に関するデータ分析です。
市場では、「Google検索結果にAI Overviews(AIによる概要)が表示されることで、Webサイトへの流入が減少する(ゼロクリック問題)」「検索行動自体がChatGPTなどの対話型AIへ移行する」といった懸念が存在します。
しかし、Speeeが保有するデータや各調査会社の主要な予測モデルを掛け合わせて分析すると、急激な変化とは異なる予測が見えてきます。
当日は、AI検索市場の拡大ペースと、既存の検索行動の変化に関するシミュレーションデータが提示されました。
これらのデータが示唆するのは、AI経由での購買行動は増加傾向にあるものの、既存の検索行動が一朝一夕に置き換わるものではないという点です。従来の検索行動と、AIとの対話による新しい探索行動は、一定期間並存し続けると考えられます。

AI検索対策における「2つの戦場」
「変化は明日起きない」としても、将来に向けた準備は必要です。セッションの中盤では、AI検索時代に必要な対策の全体像が整理されました。
AI検索対策の全体像
多くの企業が「AI検索への対策」を一括りに捉えがちですが、大きく分けて「2つの戦場」が存在します。
- ChatGPTやGeminiなどの対話型AIに対する対策
- 検索エンジン上に表示されるAI Overviews(AIによる概要)に対する対策
この2つは攻略法が異なり、Speeeでは、前者の「対話型AI」に選ばれるための取り組みをAEO(Answer Engine Optimization:回答エンジン最適化)と定義しています。

AEO対策とは?SEOとの違いから具体的な手法、成功へのロードマップを徹底解説
AIによる集客と CV 貢献を最大化するためのAEO(回答エンジン最適化)ロードマップと具体的な施策を、4つのファネルに分けて解説します。

AI Overviews(AIによる概要)とは?SEO/マーケティングへの影響と今知っておくべき対策
AI Overviewsの基本機能から、AI Overviewsに引用されるための対策5原則を、Speee AIリサーチ&イノベーションセンター(AIRI)の知見に基づき徹底解説します。
特に今回の議論で中心となったのは、このAEOにおけるSpeeeの独自メソッド「AIレコメンデーションファネル」の概念でした。
AIに推奨されるためのプロセス:AIレコメンデーションファネル
「AIに推奨される」状態を作るには、以下の4段階のプロセスを経る必要があります。
- 第1段階:AIに見つけてもらう
AIが参照すべき情報源の候補リストに自社サイトを確実に含める。 - 第2段階:AIに理解してもらう
AIが自社サイトの内容を正確に解釈し、要約や引用に利用できるように情報の構造と記述を最適化する。 - 第3段階:AIに推奨してもらう
AIが多数の情報源の中から自社サイトを「最も信頼性が高い、引用すべき情報」として評価し、優先的に選択する。 - 第4段階:AI推奨をCVに繋げる
AIによる推奨内容とランディングページの内容に整合性を持たせ、CVRを最大化する導線を設計する。
例えば、ある商材(ここでは仮に「空気清浄機」とします)のマーケティングにおいて、以下のような課題ケースが解説されました。
「自社サイトの検索順位は上位だが、AIの回答では参照されない」
「スペックは競合より高いのに、AIが特定のターゲット層(例:子供がいる家庭)におすすめしてくれない」
これらは、AIが情報を「どう学習し、どう整理し、最終的にユーザーに推奨しているか」というLLMのプロセスに対する理解不足に起因することがあります。
セッションでは、「SEOとAEOの評価基準の違い」や「AIに認識されやすいコンテンツ構造」について解説が行われました。
Speeeだからできる「AIの思考プロセス」の解析
なぜSpeeeはこのような詳細な分析ができるのか。それは、社内に設立された専門機関「Speee AI リサーチ&イノベーションセンター」の存在にあります。
AI検索のブラックボックスを解明する独自指標「AI Visibility Score™」
AIのアルゴリズムはブラックボックスであり、単なるツールの数値だけでは本質的な対策は困難です。そこで同センターでは、AIの思考プロセスを可視化する独自指標「AI Visibility Score™」を開発しました。
これは、自社のブランドや製品がAIからどう評価されているかを、以下の4つの観点でスコアリングするものです。
- AIに見つけてもらえるか
- AIに理解を促せるか
- AIに推奨してもらえるか
- AI推奨がCVに繋がるか
これにより、ボトルネックを特定し、科学的なアプローチで改善を図ることが可能になります。

AI Visibility Score™ (AVS)とは? AI検索のブラックボックスを解明する、SpeeeのAEO独自メソッドの中核指標
AI Visibility Score™ (AVS)とは、AI検索における企業の「見つけられやすさ」や「推奨されやすさ」を定量化するSpeee独自の指標です。ブラックボックス化しているAIの回答生成プロセスを可視化し、AEO対策のボトルネック特定を可能にします。
懇親会でのディスカッション
セッション終了後の懇親会では、参加いただいた皆様と登壇者の藤井、AI リサーチ&イノベーションセンター CSIOの渡邊 洋介、Speeeのセールスを交えた活発な意見交換が行われました。
参加者アンケートより
今回の参加者の皆様からいただいた感想の一部をご紹介します。
「これだけ研究し尽くしているのに、これをメインサービスとして強く勧めるのではなく、『まだ急いで着手すべきではない』というスタンスを示している点に、事業グロースを軸とするサービスの姿勢を感じました」
「懇親会の際に、詳細部分まで質問させていただく時間があり、大変満足でした。次回も開催される際は、是非参加させていただきたいです」
単なる施策のHow toに留まらず、「AIエージェントが普及した世界で、自社の事業モデルはどうあるべきか」「AIを自社内でどう活用していくべきか」といった、マーケティングの枠を超えた"事業そのもの"についての熱い議論が夜遅くまで続きました。

結論:いま始めるべき「準備」とは
今回のイベントを通じて、私たちが共有した重要事項は以下の通りです。
「変化が起きた瞬間に、正しい判断ができるモニタリング環境を作っておくこと」
AI検索の普及は、ある日突然すべてが変わるものではなく、段階的に進むものです。そのため、以下の3ステップでの準備が推奨されます。
- 既存チャネル(SEO等)の予算は維持し、足元の収益を守る。
AIシフトは過渡期であり、現時点で確実な流入源である既存のチャネルを維持することは重要である。 - AI経由での流入数・CV数の「モニタリング」を開始する。
対話型AI経由で、実際にどの程度の流入数・CV数が発生しているかを可視化し、SEO・広告・SNSなど既存チャネルと比較したポジションの把握を行う。 - 変化の予兆が見えたら、リソースを配分できる体制を作る。
モニタリングデータに基づき、AI経由の購買が増え始めたタイミングで、AEO施策へ投資できる体制構築を進める。
Speeeでは、この「モニタリング」と「戦略策定」を支援するAEOサービスを提供しています。
AI検索は不確実性が高いテーマですが、データに基づいた冷静な判断が求められます。
私たちはこれからも、マーケターの皆様の「正しい投資判断」のための情報提供の場を提供していきたいと考えています。

